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最高裁判所第三小法廷 昭和50年(行ツ)61号 判決

岡山市鹿田町一丁目一番八号

上告人

三沢久直

岡山市天神町三番二三号

旧岡山税務署長事務承継者

被上告人

岡山東税務署長

山根正寿

右指定代理人

児玉一雄

右当事者間の広島高等裁判所岡山支部昭和四九年(行コ)第一号相続税の更正ならびに加算税決定の取消請求事件について、同裁判所が昭和五〇年四月二一日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

原審の確定した事実関係のもとにおいては、本件土地につき指定された換地予定地の相続開始の時における評価額をもって本件相続税の課税価額を算定すべきであるとした原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、右違法のあることを前提とする所論違憲の主張は、失当である。論旨は、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 関根小郷 裁判官 天野武一 裁判官 江里口清雄 裁判官 高辻正己)

(昭和五〇年(行ツ)第六一号 上告人 三沢久直)

上告人の上告理由

一、原判決は、判決に影響を及ぼすことの明らかな重要な事項について判断を誤り、相続税法に違背がある第一審判決理由を採用した。

すなわち、被上告人(被控訴人)の昭和四七年一〇月一八日付、乙第一号証及び乙第二号証は土地区画整理事業の実態について把握されずに考えられた基本通達と通則的事項である。

そのため上告人(控訴人)は、昭和四七年一二月一四日付準備書面に乙第二号証に対する反論の通りで、清算金の額を定めるには、従前の土地の評価額及び仮換地の評価額の定めがなければ、次の通りの計算式により算出する事は出来ない。

従前の土地の評価額(-)仮換地の評価額=(+)(-)清算金の額

従前の土地の評価額(評価指数)及び仮換地の評価額(評価指数)の定があれば、次の通りの計算式により、仮換地の評価額により従前の土地の評価額が算出する事が出来る。

従前の土地の評価額(評価指数)(÷)仮換地の評価額(評価指数)=比率

算出された比率を次の計算式により従前の土地の評価額が算出する事が出来る。(被上告人の主張する従前の土地の評価額に相当する額ではない)

仮換地の評価額(×)比率=従前の土地の評価額

以上の計算理由に基づいて算出された従前の土地の評価額は、仮換地の評価額がいかに変化しても正確に算出される。

被上告人(被控訴人)の乙第一号証は、土地区画整理法第九八条の規定による仮換地の評価額は、従前の土地の評価額に相当すると述られているが、次の理由により誤った考え方である。

乙第二号証の計算式は誤っている。

仮換地の評価額(+)(-)清算金の額=従前の土地の評価額

通則的事項(13)(乙第二号証)によれば仮換地は、換地計画に基づいて指定されてあるため清算金の額が定まっており、仮換地の評価額を清算金の額で相殺すれば、従前の土地の評価額にあてはまる考えであるが、実務は換地計画に相当する計画のある場合は、評価額は使われず評価指数によって、換地処分の直前に換地計画に定められる従前の土地の評価額と仮換地の評価額及び清算金の額等の時価に相当する様に、評価指数に係数が乗じられ各評価額が定められ、認可を受け換地処分がおこなわれており、換地処分前には清算金は評価指数の状態である。

現在地方都市における土地区画整理事業の仮換地の指定は、一般的には、仮換地を指定する場合は換地計画に相当する計画は定められていないため、清算金の額など毛頭定まっていない、その間に相続及び遺贈があった時のため、被上告人(被控訴人)が独自に手数のかかる従前の土地の評価事務を換地処分まで続けなければならないため、相続税法に違背しても手数をはぶく事の方が法律より優先する考え方によって、基本通達(乙第一号証)がだされており、この基本通達により清算金の額の定めのない、従前の土地の評価額は仮換地の評価額に相当するとして、相続税法を無視して課税事務の円滑を計った。

二、原判決は、判決に影響を及ぼすことが明らかな事項について判断を誤り、憲法に違背がある第一審判決理由を援用した。

すなわち、本件の従前の土地の評価額は換地計画に相当する換地設計書により定められた換地予定地(仮換地)の評価額が相当であると、法的根拠に基づかずに認めた。

換地計画は土地区画整理法第八七条に必要事項が規定され、その事項が換地設計書に欠げており、上告人(控訴人)の昭和四九年一〇月一一日付準備書面の通り、従前の土地の評価額と換地予定地の評価額及び清算金の額等が定められた、各筆各種権利別清算金明細書に相当する簿書が現時点において、未作成の状態の換地設計書を換地計画に相当すと認める事は誤っている。

そのために、換地予定地(仮換地)の評価額を法的、技術的根拠に基づかずに、政治的判断により、現実に経済的を亨受している事により従前の土地の評価額に相当であると解せられているが、本件換地予定地は特別都市計画法第一三条、同法第一四条の規定により、経済的を亨受しており、被上告人(被控訴人)の昭和四七年一〇月一八日付、乙第二号証の計算式を例にとっても、清算金の額が未確定の状態では換地予定地の評価額に相殺する事が出来ないため、従前の土地の評価額に相当するとはいえない。

かりに相当する評価額であっても、相当という事は換地予定地の評価額は従前の土地の評価額とみなした事で、そのためには相続税法第三条より同第九条までのみなし取得財産の規定に該当していなければならない。しかし、該当していないため課税物件は従前の土地である。

相続税の課税物件は、相続税法第一〇条の規定により現実に権利のある不動産で、上告人(控訴人)の昭和四九年一二月十六日付甲第九号証(従前の土地)であり、現実の権利の所在は従前の土地かそれとも換地予定地か判断するためには、土地区画整理法第一〇四条第一項の規定によると、換地処分の公告があるまでは現実の権利は従前の土地にあり、換地予定地の評価額を認めた判断は誤まっている。そのため、憲法第三〇条の定めに違背して、国民に法律の定めによらない納税の義務を負せた結果となった。

以上いずれの点よりするも、原判決は違法であり破棄されるべきである。

以上

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